あきらのあきらめないブログ

普段は歴史ブログを書いていますが、それ以外の思いを綴ります

「砂の女」に似た男

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男は思った。似ている、かなり似ているかもしれない。

「オレも、「砂の女」のように、気がつかないうちに、砂の世界に引きずり込まれいたのだろうか」

男は、人生を振り返り、ぶるっと震えた。

男の半生

男は大学を卒業してから一般企業に入社しサラリーマンとなった。具体的にやりたいものはなかったが、社会に出てやりたい事を見つけ、サラリーマンから抜け出して、自分でビジネスを始めたいと言う夢を持っていた。

 

最初の若いうちは、言われた事を言われた様にやる、仕事内容である。そこに自分の意思決定を強く反映させる事はできない。

 

ビジネスを自分で始めるには、資金が必要だし、社会をある程度知っておく必要がある。それまでの辛抱だ、夢を叶えていくための修行だ、そう思い耐え忍んだ。

 

雇われの身である、サラリーマンの仕事はたやすいものではない。昔は、サービス残業パワハラなど日常的に行われていた、殺伐とした心も干上がるようなブラック職場だった。

 

若い男は、ブラック化した職場に耐える事ができなかった。僕は何のために働いているのだろう。夢に向かっているはずが、全然叶えられないじゃないか。精神的にも追い詰められた男は、脱出を試みた事があった。退職願いを出して脱出しようと思った。

 

しかし会社は、自分の時間を献上して尽くす人間を、簡単には手放したくなかった。もっと貢献して貰わぬば、雇った意味がない。

 

君は後先の事を考えたのか。社内には他の部門もあり、異動と言う手段もあるぞ。

 

行き先がない今、会社をやめると収入源は完全に絶たれ、男は生活に窮する。会社に行きさえすれば給料がもらえる。男は異動願いを出して、職場を変えてもらい、しばらく働きながら、夢である自立を考える事にした。

 

男は夢に向かって自分は何ができるのか、探し始めた。起業家の本を読んだり、セミナーや勉強会に参加し、意識を高めていった。

サラリーマン以外に、自分はどんな仕事ができるだろうか。男は分からなかったが、夢に向かってうご出した事で、満足している部分もあった。いつか、サラリーマンを抜け出して、起業家になるぞ。

 

異動届を出した男の新たな職場は、快適であった。マイペースで、自分が思った事を積極的にやらせてもらえる風習があった。

初めて男は仕事に興味とやり甲斐を感じるようになった。

 

男には、スポーツ、映画観賞、読書の趣味があったが、会社での実験、パソコンでデータ解析、専門書の読書に変わっていった。

朝早くから、夜遅くまで、一心に仕事をし、会社での仕事が中心の生活になっていった。

 

忙しい毎日で、男は自分を振り返る時間も余裕も失っていた。

自分のやりたい事は何?

今は仕事がやりたい、仕事で成果を出したい。

 

「夢は何?」

 

会社という砂漠で、仕事と言う砂に捕まり、ゆっくりゆっくりと、会社組織、会社文化の砂の底に、引きずりこまれていくのであった。

 

「夢?」

 

ある時偶然、男はふと、我に返った。

男は愕然とした。長いあいだ、夢を追うのをやめていた。夢を考えることすら忘れていた。

 

男は、自分の夢を思い出した。

 

やりたい事を見つけ、サラリーマンから抜け出し、自分でビジネスを始めたい。

 

やりたい事って?

まだ、今なら間に合うかも知れない。やりたい事を見つけて、会社組織から抜け出して、フリーになるんだ。

 

砂に生きる男

あれから10年の月日がたった。

男は、精力的に活動し、やりたい事を見つけた。今は、やりたい事を、ライフワークとしてやっている。

 

しかし、男は同じ会社と言う、砂漠の中で、仕事の砂に引きずり込まれたままだった。抜けようと思ったが、押し寄せてくる砂が多く、かき出してもかき出してもきりがなかった。

ますます、会社と言う安定した給料と生活が保障される、アリ地獄にズルズル引き込まれ、逃げ出ることが難しくなっていた。

 

「オレも、「砂の女」の主人公の男の様に、気がつかないうちに、砂の世界に引きずり込まれていたんだなあ」

男は、人生を振り返り、ぶるっと震えた。

 

そして、主人公と似たような事を言った。

 

「会社をやめる事はいつだってできるさ。だけど今はやめる必要はないと思うんだ。多くないが給料はもらえ、生活もできている。それに、金にはならないが、やりたい事もできている。自らこれを放棄する事はないさ」

 

男は定年まで、いや定年を過ぎた再雇用の期限まで、砂に捕まった生活を続けるのではなかろうか。

 

しかし、男は「砂の女」の主人公とは違う一言が印象的だった。

 

「いつの頃だろうか。どうせ会社から抜け出せないなら、いっそ利用してやろうと思ったね。別に悪い事をするわけじゃないさ。自分のやりたい事を、仕事の中に入れていくのさ。自分が砂の様になって、仕事を巻き込んでいくように」

 

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